2024年4月1日月曜日

7. 燃料電池車が地球環境を救う!

                      (改定) 201541
 ついに トヨタ、ホンダが、燃料電池車を700万円台で国内発売開始しました。 
2016年には日産も発売予定です。 国から200万円の補助金が付いて500万円台、販売が順調に伸びれば今のハイブリッド車と同等の値段になる事が予測されます。 いよいよ無公害の水素社会へのスタートです。
  30年以上前からCO2ガスによる地球温暖化が大問題になり、1997年の京都議定書で世界中が温暖化対策に取り組むことになりましたが、最大排出国のアメリカは数値目標を設定せず、中国は経済発展途上を理由に議定書すら締結しておらず、実質的CO2低減は困難を極めています。 
  そういう中で省エネ先進国の日本は地球温暖化防止・CO2低減の牽引役を果たして来ましたが、2011年の福島原発事故で全ての原発が停止して一転、LNG・石油燃焼切替えによるCO2排出量が約30%も増加して地球温暖化を加速する側になってしまいました。原発停止=燃料切替等による発電コストUPは年間2~3兆円、10年間で20兆円以上のコストUP分を国民は負担していることになります。また自然エネルギー活用の美名に踊らされて、広大な太陽電池パネルで山林は切払われ自然破壊が進んでいます。

 私達は直面した原発事故リスクに目を奪われて原発即停止を唱えていますが、将来的に取返しのつかない地球温暖化の進行防止や、未来を救う技術開発や経済発展には中々目が向きません。 そういう逆風の中でも弛まぬ技術開発を続けるトヨタやホンダの技術者に限りない尊敬と感謝の念を覚えます。

 技術開発が加速する燃料電池車ですが、
最大の課題は『水素供給システム構築』です。 

石油関係技術者の友人達は、中々今迄の固定観念から脱する事が出来ず、『燃料電池車は普及しない。 自動車メーカは ”水素ありき” で燃料電池車を開発するが、水素製造の過程でガソリン・ディーゼルエンジン同等のCO2を排出する矛盾に目を向けない。』 と保守的で、燃料電池車に懐疑的・批判的です。 燃料サプライヤとしての先見の明・使命感、社会貢献の戦略的視点が希薄なのではないかと懸念します。 現状維持のネガティブ思考では歴史的な技術革新や社会の発展に寄与できず、やがては社会的存在意義を失っていきます。 
  従来の内燃機関や石油・LNGのボイラ燃焼等は大量のCO2とその4倍の窒素と一緒に排出します。その排出ガスからCO2だけを捕集し圧縮して大深度地中に封じ込める技術を開発中ですが、何十年かけても実現は困難で、非現実的です。

 しかし、LNG・シェールガス・石油・石炭等から水素製造する方法は、炭化水素と水蒸気を触媒下で接触分解させ、水素(分子量2)とCO2(分子量44)だけが発生するため分離捕集が容易で、CO2を残らず回収処理する事が出来ます。 現に千葉石油精製工場では、この不用CO2からドライアイスを製造する合弁工場が併設されて商用化されています。 またCO2をハウス栽培に供給すれば生産増進し、藻類で光合成させれば石油生産も可能で、余剰分はカルシウム(海水から容易に抽出)に吸収させて大理石(CaCO3)として固定化が簡単に出来、大深度地下への封入も容易となります。 水素社会はCO2排出も極小化できる理想社会なのです。

一億円の未来車が 500万円で販売開始!   2013年4月11日                                                                                 
 究極のエコカーとして20年前から開発されてきた燃料電池車が、ついに500万円で発売されます。 20年もかかったのは、電極に高価なプラチナを使用する為、10年前の実証車が1台1億円、数年前でも3~5千万円と高価だったからです。 先日 NHK『おはよう日本』で、また日経新聞1面で 『トヨタが2年後、燃料電池車を500万円で発売! の特報がありました。
  普及の為に政府は補助金の設定を検討しており、2015年の発売時には400万円程度まで安くなる可能性もあります。 燃料電池車による経済効果は2.7兆円、周辺産業を加えると10兆円は軽く超えます。暮らしや産業は大きく変わり、日本のエネルギー問題や貿易収支にも多大な影響を与えそうです。
 現在、原発事故後の火力発電割合が増え地球温暖化ガス排出が急増している問題の解決にも、シェールガスやメタンハイドレードを原料とした燃料電池発電が大きな役割を担うことになりそうです。
 
 世界はCO2による地球温暖化が進行し、原油=ガソリン価格の高騰、少子高齢化で自動車を使う人が激減し、車の販売台数が減少し続けています。 自動車各社は突破口を電気自動車に求めましたが、蓄電池の限界(150~200Kmという短い運転距離)、急速充電でも30分(通常充電は数時間)という使い勝手の悪さ等で主流になれず、販売は低迷しています。 更に原子力発電所の稼働再開が不透明な中で火力発電へのシフトで電力料金は高くなり、普及の前提も揺れています。
     

ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も回生した電力の蓄電池では数十Kmしか走れず、メインはガソリンエンジン走行で、市街地での実燃費は20Km/L前後と、あくまで過渡的な準エコカーです。
      
   代わりに脚光を浴び始めたのが燃料電池車です。 最大の特徴は、水素と酸素を反応させる際に発生する電気で自動車を走らせることです。 燃料効率はガソリン車の2、排出されるのは水(蒸気)で、空気を全く汚さずCO2も排出しません。 (水素製造過程の方法によってはCO2がでます。)一回の水素充填は3分程度で、ガソリン車よりも長距離を走ります。 大型化すると商用発電機になります。

  従来、燃料電池車が1台1億円と高価だったのは下の5つの難しい問題があるからです。 特に難問だったのが、①燃料電池セル(水素と酸素の反応を高める触媒)、②水素貯蔵容器でしたが、ここにきて画期的な技術革新(ブレイク・スルー)が起き、1台500万円を実現しました。

1.ブレイクスルーした最新技術
(1).高圧水素をためる水素貯蔵容器
 炭素繊維をタンクに巻き付ける技術開発で、強くて小型軽量の貯蔵容器ができました。炭素繊維は日本のお家芸。「海外メーカーにはなかなか真似できない」と、開発したトヨタの内山田竹志副会長は話します。また国土交通省は今回、高圧ガス保安法の省令を改正し、車載の水素容器の圧力を2倍の700気圧まで認める方向です。これにより水素タンクを大きくする必要がなく、ガソリン車と同じようなサイズの車にできると共に、走行距離も一回の充填で500~700Km走れるように なります。

(2). 燃料電池セル

 燃料電池セルのコストアップの最大原因は燃料電池の材料として使われるプラチナです。プラチナは水素と酸素を化学反応させ発電するのに欠かせません。 プラチナの価格は1グラムおよそ5千円。車1台当たり約100グラム使う為、プラチナ単体だけで約50万円もかかりますトヨタ自動車では燃料電池を小型化し、使用するプラチナを開発当初の3分の1まで減らすことに成功しました。しかし燃料電池車の普及の為には、更にコストダウンが必要です。
   群馬大学の研究室ではプラチナ代替材料としてカーボンに着目しています。カーボンは原料の樹脂が簡単に手に入り、プラチナの千分の1と安価です。 同じ大きさの燃料電池で比較すると、発電能力はまだプラチナの6割から7割ですが、 2020年には実用化、燃料電池の大幅なコストダウンが可能になると期待されています。

2.世界の自動車業界のあわただしい動き
 燃料電池車の市販が間近になり、世界の自動車各社の動きは慌ただしくなってきました。1月にトヨタが独BMWと燃料電池車の共同開発で合意し、その4日後には日産と仏ルノー連合が独ダイムラー、米フォードと提携して、開発の合従連衡に拍車がかかっています。 

                   

3.日本の産業構造が大きく転換する可能性
   日本産業が抱えてきた致命的な弱点は、エネルギーの90%以上を国外の化石燃料に頼っている事です。 中東の政情不安、イラン・ソマリア・中国からのシーレーン脅威などで日本経済は即座に壊滅的打撃を受ける危険性を持ち、また産油国戦略や先物 取引で今後も原油高騰は止まらないと予測されます。
40年前の1973年度の原油輸入量は2・9億キロリットルで、金額は86億7000万ドルでした。2010度は輸入量が2・2億キロリットルに減ったにもかかわらず、原油高による輸入額はなんと13倍にもなっています。油高、ガソリン価格高騰が自動車離れの原因にもなっています。
燃料電池車は、CO2やその他有害物質を発生しない理想的な車である事と、従来の有限な化石燃料を使う必要がないため大きな潜在需要があります。
燃料電池車・発電用の水素原料は石油・天然ガス・石炭等ですが、最もCO2排出が少なく発生水素の割合が大きいのはメタン(天然ガス)です。最近注目を浴びている米国・カナダのシェールガスが輸入できるようになれば、従来の三分の一の価格になると期待されています。
またシベリアには永久凍土の下にメタンハイドレードが大量に冷凍固化して存在しています。これが地球温暖化で爆発的に大気に放出されています。メタンはCO2の25倍の温室効果があり、近年必ず温暖化加速の主原因になります。・・が、世界中がその問題点に気付きながらも何ら手を打たず、手を付けやすい、しかし「根本対策にならない再生可能エネルギー」だけに目を向けています。「枝葉を見て、木・森・山が見えない」状態と言えます。
 日本の近海にはメタンハイドレードが大量に存在します。 深海の為 採掘は難しいとされてきましたが、新技術が開発されてきており、5~10年後には採掘・商用可能になるでしょう。 水素の自給率が高まれば、莫大な原油購入資金の国外流出を減らせます。 それをインフラ整備などに充てれば関連産業の育成や雇用創出にも大きな効果がでるでしょう。

4.今後の課題
(1).水素ステーションの整備・普及
 燃料電池車普及のためには、ガソリンスタンドと同程度の水素ステーションを設置する必要があります。 水素ステーション設置の大きな課題が 建設コストや運営コスト、保守コストなどです。水素ステーションに供給する水素の移動方法についても現実的な方法を構築する必要があります。 現行ガソリンスタンドと同じような水素貯蔵タンクでは、一日20台から数十台の車にしか充填できません。 商売が成り立つには、一日に200400台の充填を可能にする方法を構築・実現する必要があります。 
水素タンクへの補充も重要な課題です。 タンクローリーでの補充では、一日数十台という状況になるので、水素配管などによる大型水素供給手段を検討する必要があります。このような水素ステーションの整備・普及が必要になりますが、国内企業が得意な炭素繊維などの貢献もあって、実用化レベルにきています。政府は 大都市中心に水素ステーション設置を検討しています。

(2)
.水素貯蔵容器の安全性の確立
以上述べてきたように、水素は今後の社会に重要なクリーンエネルギーです。 福島原発で実証されたように、水素は爆発の危険性が高く、爆発限界範囲が 4~75% と少しの水素漏れや滞留でも危険です。(プロパンガスは 2 ~9.5%)  
  水素ボンベ方式 ・・・充填量を確保する為に 70MPa(700気圧) という超高圧で貯蔵する為、車衝突事故が起きでも安全性が確保される水素貯蔵方式の確立が不可欠です。 例えば水素ボンベの口金が外れるとボンベはロケットのように高速で飛び出す危険性があります。 この対策としては、ボンベを変形しない頑丈な保護カバーで囲うことや、最近搭載され始めた 『衝突・追突回避システム』 を全車に義務化する事等が考えられます。
   体水素方式 ・・・液体水素は沸点が –253℃ と超低温なため、火災爆発とは異なる危険があり漏洩したら周辺は即座に凍ります。 気化するまでにそれほど長時間はかかりませんが、あたり一面が冷凍状態になり、そこに人間がいた場合はまともに浴びれば即死という事もありえます
  水素吸蔵合金(メタルハイドライド) ・・・金属の中には水素を吸蔵するものがあります。これを使うとと高圧貯蔵しなくても良く、徐々に水素が放出されるので非常に安全と考えられます。 但し吸蔵合金は重く長距離運転に必要な水素を貯蔵すると車体重量が大きくなります。 また実際運転中は、この合金は水素を放出する為に、数百度程度に加熱が必要でエネルギーロスが発生しますので、恐らく主流とはなら ないでしょう。


 5.更に期待される新技術『マグネシウム燃料電池』 (東工大 矢部孝教授)
マグネシウムは効率が良くロケット噴射にも利用されるように高エネルギーを出します。 それと同時に、リチウムイオン電池の7倍半もの電力量を保持するという特性があります。 
 ☆電気自動車はマグネシウム燃料電池16kg500kmを走行。 電池代は3800
☆鉄道は、マグネシウム燃料電池を使えば高出力なのでパングラフが不要となる。
   新幹線は500km走行も可能になる。
☆マグネシウムは海水中に約1800兆トン、 石油30万年分に相当する量が存在
そのほか、マグネシウムは砂漠の砂などにも豊富に含まれている

マグネシウムの有効性は世界中の科学者が知っていましたが、『エネルギー源としては無理』だと考えられてきました。 海水を淡水化する過程で塩と塩化マグネシウムが残りますが、この塩化 マグネシウムにレーザー光線を当てるとマグネシウムが生まれます。マグネシウム生成の工程では食塩と水を生み出すので、日照時間が長いアフリカや中南米の発展途上国の生活向上の救世主、経済発展の起爆剤になる可能性があります。
◎ 日本では上水の確保が必要な沖縄の離島などが適地となります。
◎ 四方を海で囲まれた日本にとってはまさに資源の宝庫です。


20年も続いたデフレ不況、東日本大地震・大津波、原発事故、政治の混乱・・・色々な困難が発生しましたが、一昨年の山中教授のiPS細胞や燃料電池など、最先端の技術開発分野で日本は最先頭を走っていることが分ります。  若い人達には、ワクワクするような大きな夢と強い確信を持って、堂々と力強く新しい時代を切り開いていって欲しいと思います。

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